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在宅介護の限界、在宅介護を断念する目安について [番外編]

 在宅介護が破綻して、刑事事案(警察沙汰)になり、報道されるケースが相変わらず多いです。
 報道ベースで考察しても、数ヶ月に1回は、深刻な破綻ケースになっていると判断できます。

 この記事では、介護する人(介護者)の周りにいる人の立場から、どのような状況になれば、在宅介護を断念するべきか、について伝えたいと思います。
 なお、当然のことですが、全ての事案に該当する訳ではありません。しかし、一般的には、ほぼ断念するべきケースとなると思います。

(最初に知っておいてもらいたいこと)
 本題に入る前に知っておいてもらいたいことがあります。
 厚生労働省の速報によれば、要介護(要支援)認定者数は、令和2年8月暫定版で約674万人います。
 ざっくりですが、このうち、要介護度3以上が232万人います。全体の約34%になります。
 要介護者一人には、介護者が必ず一人必要となります。介護者がいない場合、何らかのバランスの崩れにより必ず介護は破綻します。
 そして、要介護3以上の場合、要介護者(介護を受ける人)の全面的な協力が無い場合、在宅介護は事実上不可能です。詳細は省略しますが、朝から深夜までオネショ、暴言、暴力、もうろう、拒否行動、などいろいろな事案が発生するからです。当然、実際の症状は、要介護者により様々となります。

厚生労働省、介護保険事業状況報告(暫定)
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/m20/2008.html

(本題です)
 例えば、あなたが同居していない親族や会社の上司として、まず最初に介護者(介護をしている人)に尋ねるべきことは、以下の点です。

1)毎日6時間以上の睡眠を確保できているか、睡眠時間帯に介護が発生していないか?

2)要介護者が介護者と協力・協調して介護体制を維持できているか?


(解説)
 介護破綻の最後の安全装置が破壊される1番の原因は、睡眠不足です。睡眠不足により、思考力、判断力が低下し、介護者が暴走を開始します。その表れ方が、人によって異なるだけです。
 睡眠時間が6時間未満になっている場合、その状態の継続日数と不足する睡眠時間数、そして、介護者のストレス度により破綻までの時間が決まります。
 基本的に睡眠時間が6時間未満になったら、タイマーが起動したと判断するべきです。そして、いつ破綻してもおかしく無い、という危機感を関係者の間で共有する必要があります。
(特に行政関係者の場合、経験値が浅いのか、やる気が無いのか、問題意識が低い人が多い)


2)に関しては、在宅介護の場合、住環境が必ずしも介護を受ける人にとって良い状態ではありません。また介護を実施する介護者にとっても良い状態では無いことが多いです。このため、要介護者の協力が得られない場合には、速やかに在宅介護を縮小、中止の方向に導く必要があります。
 例えば、要介護3の段階になると、一人でトイレに行くことが出来なくなるケースが多いです。そういう状況にも関わらず、介護おむつを拒絶したり、汚物をぶちまけるなどの行動が発生する場合には、在宅介護を継続することは困難です。直ちに在宅介護を終了するために関係方面と調整を開始する必要があります。


(介護者は悲鳴を上げない)
 上記のような状況になっても介護者は、一人で抱えているケースが日本では非常に多い、と私は推定しています。その理由は、大昔の「介護は家族が行うもの」という風習が今でも残っていたり、中高年の人たちの無意識の感情に残っているためだと思います。
 昔は介護をするっと言っても、実際には、病状が急激に悪化したり、薬も効かないことが多いので、介護期間は非常に短いものでした。食べられない=>そのまま死亡、というケースが非常に多かった訳です。目覚ましい医療技術の進歩や介護技術の進歩、有効な薬の開発により延命も長寿も成功したのですが、その分、介護期間が大幅に伸びています。現在の介護期間は、平均すると5年を超えています。
 徐々に悪化していく介護状況は、少しずつ介護者を苦しめていくのですが、明確な基準が無いために気がついた時には、重大事態の一歩手前になるケースが多くなっています。
 介護者が弱音を吐かない時でも、小言を言わない時でも、上記の基準で正確な情報を聞き出せれば、在宅介護ができるかどうかが判定できます。


(要介護2でも油断しない方が良い)
 要介護1とか2とか3、というのは、厚生労働省が都合の良い基準を作っているだけです。現実の介護レベルとは一致しないことがしばしば発生します。会社関係者(人事・総務担当者)や介護の実情を知らない親族などが判定された要介護度だけで状況を判断すると、実際には重大事態が進行している場合があります。また、昼間の一時だけ観察して判断しても不正確で間違えた判断になることが多いです。直接、要介護者の状況を詳細に長時間、目視確認した場合を除けば、要介護判定の数字はあくまでも過去のある時点での状況証拠、と考えて下さい。例えば、24時間連続ビデオ観察した状態を早送りでチェックしてみると現実の状況が少しは理解できるようになるでしょう。
 要介護者の状態は、日々、昼夜で一気に悪化するケースもあります。腕時計式のモニターで24時間監視しないと介護者以外の外部の人が実情を把握するのは難しいのが現実です。
 

(介入しないから刑事事件に発展する)
 介護者に対して、在宅介護の体制を縮小し、ショートステイ(短期入所サービスなど)や特養などへの入所、病院への入院などの対策を実施してもらうためには、周りの人たちの援軍が必要です。
 介護者が弱い立場の人の場合、本来、介護者の味方になるべき地域包括支援センターの人たちやケアマネージャーなどがおかしな言動をする場合もあります。いわゆる弱い立場の人に介護を押し付ける行為が発生することもあります。
 こういった行為を放置するから刑事事件に発展します。逆に言えば、誰かが介入して、「もうこの介護者に全てを押し付けるのは無理ですよ、刑事事件になりますよ!」と周りの人が言わなければなりません。ここまで踏み込めば、さすがに最悪の状態を無視し続けることが出来なくなり、必要な行政手続きや介護支援が開始されることになります。


(素人が介護できる時代は終わった)
 家族介護に関しては、はっきり申し上げておけば、素人が介護できる時代ではありません。昔とはとにかくいろいろな面で異なることが多いので、介護はチームを構成し、複数人で一人の要介護者に対処する時代となっています。
 もしも家族介護を行うなら、必ず、家族介護が出来なくなった時に、どうやって家族介護を縮小するか、家族介護を中止し、どうやって介護施設に移行するか、について具体的な方針を考えておく必要があります。


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