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ヤングケアラーと公的過小支援体制の問題を検討する [番外編]

この記事は、ヤングケアラーが注目されつつあるようなので、その課題を検討します。

(ヤングケアラーとは何?)
 ヤングケアラーとは、主に未成年者が同居親族や近隣居住者(親族で無い場合もある)の家事、介護や医療支援等を行っている場合が該当するようです。

例えば、厚生労働省では、以下のように定義しています。

法令上の定義はありませんが、一般に、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている児童とされています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/young-carer.html

(文科省、教育委員会からの通知により、学校関係者による児童、生徒に対する本格的な調査)
 そもそもヤングケアラーという言葉や意味を知らない教職員や教育委員会関係者もまだまだ多数を占めています。当然、自分の担当しているクラスや学校に存在していることを認識している関係者はほとんどいません。
 家庭状況の把握の際に最もシビアな情報になるため、児童、生徒が教職員や市区町村の担当者をよほど信頼していない限り、情報開示してもらえない可能性が高いことも認知度が低い原因と考えられます。
 また、介護の相談を教員にしても、無神経な応答しかしない教員が存在していることも児童・生徒が情報を隠す深刻な原因となっていることもあるようです。


 今後、本格的な調査が始まれば、50から70%程度の捕捉率で捕捉できるようにはなるでしょう。
 一方で捕捉されない児童、生徒の状況把握をどのようにして対処するかが課題になるでしょう。


(ヤングケアラーをリストアップした。それで?)
 ケアマネジャー等の介護関係者や学校関係者の努力により、ヤングケアラーの把握ができた、としましょう。
 対象児童、対象生徒が把握できたのは、良かったです。
 では、次に何をするべきでしょうか?

 もしも、保護者に児童生徒に対する介護作業を中止するように要求した場合、保護者の介護負担が過重になり、介護離職や一家離散、家族崩壊、さらに、もっと恐ろしい刑事事件になる可能性もあります。
 そもそもなぜ、未成年の児童生徒がヤングケアラーとして長時間、家事、介護、医療支援などをやっているのでしょうか? 理由は、公的支援制度が過小でほとんど機能していないためです。
 例えば、要介護2となった要介護者が在宅介護となっても毎日家事ヘルパーが来てくれる訳ではありません。自己負担する金額もかなりの高額となります。従って、所得が十分で無い場合には利用できません。そして、これが、ヤングケアラーを生み出す最大の理由となっています。
 ヤングケアラーとは、最もひずみが弱い部分に集中した結果であり、結局、公的支援が受けられないから、未成年者が対応することになっている訳です。


(情報連携条例(法制)を制定する必要性)
 個人情報保護の観点から、病院などの医療施設、ケアマネージャー、市区町村の介護担当、市区町村の教育委員会、学校関係者、地元警察署、地元消防署などは、対象となるヤングケアラーの世帯の情報について情報共有することは現在の法制度では、認められていません。情報開示して情報連携することは出来ない状態となっています。
 もちろん、「事件」が発生すれば、対応することになりますが、それまでは何も出来ない状態となっています。
 例えば、教員が生徒の異変に気が付いて教育委員会に連絡しても、そこから先の情報連携は出来ない状態です。その世帯に介入するには、教員に与えられた情報が少なすぎるし、法的根拠も貧弱と言えるでしょう。また、介護が必要な家族などに対する公的支援制度がほとんど機能していないので、その世帯の保護者からは、介入を拒絶されるでしょう。


(学校関係者は、地域包括支援センターと連携する必要がある)
 介護関係に関して言えば、市区町村には、地域包括支援センター(名称は地域毎に異なることもある)があり、要介護者が介護認定されていれば、その情報が集まる仕組みとなっています。
 学校関係者は、まずは地元の地域包括支援センターと連絡会議を定期的に開くべきでしょう。
 そして、介護等を行っているヤングケアラーの児童生徒と支援センターの担当者が個別面接する機会を設ける必要があると思います。
 まずは、介護制度が利用可能かどうかを調べ、利用できそうなら保護者との面談につなげていくべきでしょう。また、制度利用が出来ない場合でも他の公的制度が利用できないかを検討することは重要でしょう。


(児童・生徒が1日に実施可能な介護時間はどのくらいか?)
 そもそも児童・生徒が自分の家族のためとはいえ、児童・生徒が介護作業を実施することは、児童労働を禁止した条約や児童虐待防止の観点から望ましいこととは言えません。
 しかし、現実的な対処としては、1日の介護時間(家事作業・医療支援作業を含む)を制限することが望ましいと思います。
 では、どのくらいの時間が可能となるかですが、私は、最大で4時間が限度と考えています。これは、学校への通学、睡眠時間の確保、宿題やトイレ、入浴などの時間も必要です。特に休憩時間が無ければ、継続的な介護作業、介護支援作業は難しいからです。
 ただし、4時間というのは、継続的に可能な時間ではなく、あくまでも短期間の場合であり、本来は、1日2時間以内にするべきでしょう。
 つまり、児童・生徒の負担が2時間を超える部分については、公的支援により介護支援等が行われる必要があります。


(まとめ)
 日本の現状を考慮に入れると下記の通りとなります。
1)学校関係者は、教育委員会の指示に従い、学校に通学する児童・生徒の家事従事、介護、医療支援等状況、いわゆるヤングケアラーの状況を把握する。そのために必要な広報活動、情報管理体制、守秘義務等(むやみに他児童、他生徒が知ることが無いようにする)について必要な整備を行う。

2)地域包括支援センター、学校関係者、教育委員会、市区町村の介護担当課などは、適切な頻度で調整会議を招集し、必要な情報交換を行う。必要に応じて、病院関係者、警察、消防、保健所等にも参加してもらう。

3)公的制度について支援体制をさらに充実する。特に児童・生徒の介護時間(家事・医療支援を含む)が1日4時間を超える場合には、公的支援により介護時間が4時間未満になるように強力に支援する。また、1日4時間未満の場合も相当な支援体制を整備し、介護時間が1日2時間を超えないように努力する。


(最後に)
 まずは児童・生徒が相談できる体制を整備するべきでしょう。そして、相談に来た児童・生徒を追い返したり、ひどい言葉で傷つけたりしないような体制を構築しておくべきでしょう。
 相談にあたる教員等が児童、生徒から信用されていないと必要な情報を引き出すことは難しいでしょう。相当信頼できる教員等が、場合によっては教頭や校長が直接面談するような体制を整備することが最初は重要だと思います。


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車椅子で階段を利用することのリスクを検討する [番外編]

 車椅子(押し車、歩行器、ベビーカーを含む)を利用して電車を利用する際に最大の問題は、エレベータが近くに無い場合、階段を利用しなければならなくなることです。
 今回は、この件について多角的に検証してみたいと思います。

(駅に階段しかない!)
 お金がかかるから仕方の無い面もありますが、日本の鉄道駅にはエレベータが設置されていないケースが今も多いです。例えば、東京のJR御茶ノ水駅は、すぐ近くに大学病院が2つもあるにも関わらず、現在、やっとエレベータが設置できる予定になっています(現在、必死で工事しています)。
 後付けのエレベータは、設置場所が制限されます。その結果として、駅の端に設置されたり、改札口からの距離が非常に長くなるケースもあります。
 そうすると、結果的に階段を利用して昇降したい状況が発生します。


(移動機材を階段を使って昇降させる際のリスク)
 ここから車椅子、歩行器、ベビーカーなどを総称して移動機材と呼びます。
 移動機材を階段を使って昇降させる際のリスクには、以下の課題があります。
1)移動作業の際に機材を破損させる可能性がある。
2)移動作業の際に乗車している人を転落させて怪我させる可能性がある。
3)移動機材で一緒に運んでいる荷物類を破損させたり、盗難にあう可能性がある。
4)移動作業の際に作業者が転落する可能性がある。
5)移動作業の際に転落等が発生した場合、付近にいる他の客も怪我をする可能性がある。

 上記について、簡単な解説をしておきます。
 例えば、車椅子に乗車した状態で車椅子を持ち上げる場合、そもそも可搬できないタイプの場合、車椅子が破損する危険があります。移動機材が破損した場合、そのまま転落事故になるでしょう。転落位置に作業者や他の客がいれば、巻き込み事故になるでしょう。
 また、通常、要介護者の荷物もザック等に収容しきれない場合、移動機材に引っ掛けて持ち歩きます。作業人数が足りない場合、荷物は先または後で移動させることになり、その間、置き引きにあう危険があります。

(事故の法的責任)
 私は弁護士ではありませんので、私見ですが、上記のような事故が発生した場合、作業者には業務上過失傷害罪などの可能性があるのでは無いでしょうか?また、民事訴訟の対象には当然なるでしょう。


(車椅子もベビーカーも意外と重い)
 人が乗車した状態の車椅子やベビーカーは意外に重たい状態になります。

人の体重+移動機材の重量+外せない荷物の重量

などがあるからです。
外せない荷物とは、例えば、酸素ボンベや生命維持に必要な可搬式医療機器などになります。


(階段での移動は、作業者にとってもかなり危険)
 一番重くなる電動車椅子を想定した場合、(例)
電動車椅子の重量 50kg
乗車している人  70kg
外せない荷物   10kg
     合計 130kg
となります。電動車椅子が重たい理由は、モーターと電池が重いこととその重量を支えるために車椅子自体も頑丈な作りになっているためです。
これが、手押し式の補助者限定型の車椅子になると10kg前後まで軽くなります。
それでも乗車した状態の車椅子を階段で昇降させようとすると4人がかりでも一人25kg程度の荷重に対応する必要があります。


(駅員は消防隊員のような訓練を受けていない)
 駅員や市役所等でも通常の職員は、消防署の消防隊員のような厳しい訓練を受けていません。消防隊が非常に人の搬送に慣れているのは、平時からそのための訓練を欠かせないからです。
 一方、そういった訓練をしていない駅員や公共施設の職員が同じ作業を行う場合、かなり危険な業務となる可能性があります。特に駅の階段などの移動量は、通常のビル2階分の高さが発生することあり、階段途中で体力が無くなった場合には、移動中の関係者全員が危険な状況になると思います。


(適切な運用がされているとも思えない)
 階段支援のもう一つの問題は、作業管理体制が整備されていないことです。
 現状では、事故防止、そして転落時の被害軽減のための手順が十分に整備されているとは言えない状況です。
 例えば、転落時のために乗車している人や作業者がヘルメットを被る、転落防止ロープを使用する、周辺警備を実施する、などは現実にはできていません。善意だけではいずれ重大事故が発生します。


(安全第一なら、階段しか無い駅は利用を避けるべき)
 上記のようなさまざまな困難があり、事故が起きた時には、要介護者の状態がより悪化することになるからです。
 冒頭の例で御茶ノ水駅を想定した場合なら、近くの神田駅や東京駅などのエレベータ設置駅を利用して乗降し、そこからタクシー等で病院に向かう方が望ましい、と私は考えています。(補助者が健脚なら徒歩で移動も可能です)


(階段での昇降は非常手段と考えるべき)
 階段での移動機材の昇降は、要介護者だけでなく、作業に従事する駅員(職員)自体が死亡事故となる可能性が高い作業となります。東京の場合、駅階段は混雑し、作業中の下側も平気で通行してきます。
 他に回避する手段が無い場合の非常手段としてのみ使用するべきであり、平時はより安全な経路を選択するべきだと思います。


(お金がその分かかるが安全のため)
 経済的な理由からタクシーは使いたくない、余計な時間はかけたく無い、などのこともあると思います。一方で階段での事故はかなり多いので、できるだけ避けるべきだと思います。


(階段での作業に、他人として協力するなら十分に本人に確認してから)
 通りがかりの際に、駅などで困っている人を助けたい場合の注意もあります。
 ベビーカーなどで階段の昇降を助ける場合にも注意が必要です。手で持つ場所が不適切ならベビーカーの部品が取れてしまうからです。車椅子も同様です。
 また、子供でも乗車中なら一旦降車してもらうべきでしょう。転落した場合の被害を最小限にするためです。安全確認も作業者全員で注意深く行う必要があります。
 そういう意味では、移動機材に接触する作業は、駅員(職員)に任せて、交通整理など接触しなくて良い作業だけを行う方が良い場合もあります。


(要介護者の増加により、階段支援は今後難しくなる)
 要介護者の人数が現在もどんどん増えています。公共施設における階段支援には、専用の昇降機やロボットなどが配備された場合には、それらを利用するべきでしょう。一方で、人力での階段の昇降支援は今後難しくなると私は予想しています。
 それは、要介護者の人数が増加し、それに伴い、階段事故が発生するようになるからです。
 昇降支援中に深刻な階段事故が発生し、要介護者や作業者が死亡するような事態となれば、多くの事業者は、階段支援を中止したり回避するようになるでしょう。


(最後に)
 私も介助者として車椅子を数年運用していましたが、常に事前の経路確認(ルートチェック)をしていたので、要介護者に公共施設の階段を使わせたことはほぼありません。寺社仏閣でどうしても段差がある場合には、数歩歩いてもらうことはあったかも知れません。
 階段は足の悪い要介護者にとって非常に危険な場所なので、より安全な選択肢があるなら、安全な方を選ぶべきだと私は考えています。




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