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車椅子で階段を利用することのリスクを検討する [番外編]

 車椅子(押し車、歩行器、ベビーカーを含む)を利用して電車を利用する際に最大の問題は、エレベータが近くに無い場合、階段を利用しなければならなくなることです。
 今回は、この件について多角的に検証してみたいと思います。

(駅に階段しかない!)
 お金がかかるから仕方の無い面もありますが、日本の鉄道駅にはエレベータが設置されていないケースが今も多いです。例えば、東京のJR御茶ノ水駅は、すぐ近くに大学病院が2つもあるにも関わらず、現在、やっとエレベータが設置できる予定になっています(現在、必死で工事しています)。
 後付けのエレベータは、設置場所が制限されます。その結果として、駅の端に設置されたり、改札口からの距離が非常に長くなるケースもあります。
 そうすると、結果的に階段を利用して昇降したい状況が発生します。


(移動機材を階段を使って昇降させる際のリスク)
 ここから車椅子、歩行器、ベビーカーなどを総称して移動機材と呼びます。
 移動機材を階段を使って昇降させる際のリスクには、以下の課題があります。
1)移動作業の際に機材を破損させる可能性がある。
2)移動作業の際に乗車している人を転落させて怪我させる可能性がある。
3)移動機材で一緒に運んでいる荷物類を破損させたり、盗難にあう可能性がある。
4)移動作業の際に作業者が転落する可能性がある。
5)移動作業の際に転落等が発生した場合、付近にいる他の客も怪我をする可能性がある。

 上記について、簡単な解説をしておきます。
 例えば、車椅子に乗車した状態で車椅子を持ち上げる場合、そもそも可搬できないタイプの場合、車椅子が破損する危険があります。移動機材が破損した場合、そのまま転落事故になるでしょう。転落位置に作業者や他の客がいれば、巻き込み事故になるでしょう。
 また、通常、要介護者の荷物もザック等に収容しきれない場合、移動機材に引っ掛けて持ち歩きます。作業人数が足りない場合、荷物は先または後で移動させることになり、その間、置き引きにあう危険があります。

(事故の法的責任)
 私は弁護士ではありませんので、私見ですが、上記のような事故が発生した場合、作業者には業務上過失傷害罪などの可能性があるのでは無いでしょうか?また、民事訴訟の対象には当然なるでしょう。


(車椅子もベビーカーも意外と重い)
 人が乗車した状態の車椅子やベビーカーは意外に重たい状態になります。

人の体重+移動機材の重量+外せない荷物の重量

などがあるからです。
外せない荷物とは、例えば、酸素ボンベや生命維持に必要な可搬式医療機器などになります。


(階段での移動は、作業者にとってもかなり危険)
 一番重くなる電動車椅子を想定した場合、(例)
電動車椅子の重量 50kg
乗車している人  70kg
外せない荷物   10kg
     合計 130kg
となります。電動車椅子が重たい理由は、モーターと電池が重いこととその重量を支えるために車椅子自体も頑丈な作りになっているためです。
これが、手押し式の補助者限定型の車椅子になると10kg前後まで軽くなります。
それでも乗車した状態の車椅子を階段で昇降させようとすると4人がかりでも一人25kg程度の荷重に対応する必要があります。


(駅員は消防隊員のような訓練を受けていない)
 駅員や市役所等でも通常の職員は、消防署の消防隊員のような厳しい訓練を受けていません。消防隊が非常に人の搬送に慣れているのは、平時からそのための訓練を欠かせないからです。
 一方、そういった訓練をしていない駅員や公共施設の職員が同じ作業を行う場合、かなり危険な業務となる可能性があります。特に駅の階段などの移動量は、通常のビル2階分の高さが発生することあり、階段途中で体力が無くなった場合には、移動中の関係者全員が危険な状況になると思います。


(適切な運用がされているとも思えない)
 階段支援のもう一つの問題は、作業管理体制が整備されていないことです。
 現状では、事故防止、そして転落時の被害軽減のための手順が十分に整備されているとは言えない状況です。
 例えば、転落時のために乗車している人や作業者がヘルメットを被る、転落防止ロープを使用する、周辺警備を実施する、などは現実にはできていません。善意だけではいずれ重大事故が発生します。


(安全第一なら、階段しか無い駅は利用を避けるべき)
 上記のようなさまざまな困難があり、事故が起きた時には、要介護者の状態がより悪化することになるからです。
 冒頭の例で御茶ノ水駅を想定した場合なら、近くの神田駅や東京駅などのエレベータ設置駅を利用して乗降し、そこからタクシー等で病院に向かう方が望ましい、と私は考えています。(補助者が健脚なら徒歩で移動も可能です)


(階段での昇降は非常手段と考えるべき)
 階段での移動機材の昇降は、要介護者だけでなく、作業に従事する駅員(職員)自体が死亡事故となる可能性が高い作業となります。東京の場合、駅階段は混雑し、作業中の下側も平気で通行してきます。
 他に回避する手段が無い場合の非常手段としてのみ使用するべきであり、平時はより安全な経路を選択するべきだと思います。


(お金がその分かかるが安全のため)
 経済的な理由からタクシーは使いたくない、余計な時間はかけたく無い、などのこともあると思います。一方で階段での事故はかなり多いので、できるだけ避けるべきだと思います。


(階段での作業に、他人として協力するなら十分に本人に確認してから)
 通りがかりの際に、駅などで困っている人を助けたい場合の注意もあります。
 ベビーカーなどで階段の昇降を助ける場合にも注意が必要です。手で持つ場所が不適切ならベビーカーの部品が取れてしまうからです。車椅子も同様です。
 また、子供でも乗車中なら一旦降車してもらうべきでしょう。転落した場合の被害を最小限にするためです。安全確認も作業者全員で注意深く行う必要があります。
 そういう意味では、移動機材に接触する作業は、駅員(職員)に任せて、交通整理など接触しなくて良い作業だけを行う方が良い場合もあります。


(要介護者の増加により、階段支援は今後難しくなる)
 要介護者の人数が現在もどんどん増えています。公共施設における階段支援には、専用の昇降機やロボットなどが配備された場合には、それらを利用するべきでしょう。一方で、人力での階段の昇降支援は今後難しくなると私は予想しています。
 それは、要介護者の人数が増加し、それに伴い、階段事故が発生するようになるからです。
 昇降支援中に深刻な階段事故が発生し、要介護者や作業者が死亡するような事態となれば、多くの事業者は、階段支援を中止したり回避するようになるでしょう。


(最後に)
 私も介助者として車椅子を数年運用していましたが、常に事前の経路確認(ルートチェック)をしていたので、要介護者に公共施設の階段を使わせたことはほぼありません。寺社仏閣でどうしても段差がある場合には、数歩歩いてもらうことはあったかも知れません。
 階段は足の悪い要介護者にとって非常に危険な場所なので、より安全な選択肢があるなら、安全な方を選ぶべきだと私は考えています。




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